ドラジャパクイーンのお部屋へようこそ!ドラマ・演劇・言語教育について思うこと

ドラマ・演劇を日本語教育に活用するアイデアをシェアする場です。

ドラジャパクイーンの迷走 1:「演劇」と「ドラマ」同じ?それとも違う?

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         ビクトリア大学庭園の鉄線を観察する柴犬ポント

前回のブログでは、ドラジャパクイーンの誕生です!と大見得を切りました。

 

しかし、カナダの大学でドラマ、演劇を外国語に活用という留学の大義名分にも関わらず、研究の方向を大転換してしまったのです。

 

そのころ、カナダ生まれの日系子女に日本語を教えるというアルバイトをしておりました。両親は日本からカナダに移住された方々です。お子さんに、自分たちの言語と文化を伝えたいという願いから生まれた「日本語学校」は1980年代、カナダの各地にたくさんありました。そんな学校の一つで、6歳児を担当することになりました。土曜日の午前中、3時間だけの短いお付き合いでしたが、子供を教えることによって、たくさんのことを学びました。いろいろな学習者に出会いましたが、6歳児に教えるのが一番勉強になりましたね。彼らはつまらないとどこかに行ってしまいますから。この出会いで、子供さんにとっての日本語・日本文化の意味、また親御さんにとっての日本語・日本文化への思いなどについて、興味が湧いてしまったのです。この継承語(母国語でもないけれど、外国語でもない祖先の言語)としての日本語を論文のテーマとしたい!と思ったのです。留学時の研究テーマとは全く違う分野に足を踏み入れたきっかけが日本語学校でのアルバイトということになります。ただし、20年後に回り回って、ドラマ、演劇を外国語に活用というテーマに回帰するんですけど。行き当たりばったりの人生ですよね。ドラマチックでしょ?

前置きが長くなりました。本題に戻り「ドラマ」と「演劇」の共通点と違いについて考えてみましょう。

「ドラマ」と「演劇」は往々にして、同じような意味として使われます。国語辞典で「演劇」を引くと、「ドラマ」と定義され、「ドラマ」を引くと、「演劇」と定義されることもあります。国語辞典、あるあるですね。

演劇の専門家による解説はどうでしょうか?

演劇学の大家、河竹登志夫さんによる「演劇」についての解説は、簡潔明瞭に「演劇」の本質を表現しているように思えます。解説を私なりにまとめますと、「演劇」とは「ことばと身ぶりによって表現される芸術の一形態で、俳優、戯曲、観客、劇場の四要素から成立します。観客は受身でただ舞台を見ているだけのように見えますが、観客の反応は、劇の出来不出来を左右することもあります。」となります。「演劇」のフォーカスは、どうもパフォーマンスとして「見せる」ところにあるようですね。 

さて、「ドラマ」は何にフォーカスを置いているのでしょうか?ドラマ教育の専門家、小林由里子さんは、「ドラマ」の語源であるギリシャ語のDran(To do)に言及されています。「ドラマ」は「する」ことに重点が置かれているということですね。極端なことを言うと、見ている人たちの反応がどうであれ、ドラマ活動に参加している人たちの体験プロセスの方が大事ということになります。

以前、日本語教育の現場で、学生さんのお楽しみ、内輪で盛り上がれるお祭りとして、スキット作成に取り組ませていました。どんな風に見えるのか、どんな風に見せたいのか、という意識は全くなく、学生さんたちが一所懸命自分たちで書いたセリフを覚えてクラスメートの前で演じているのを微笑ましく見ていました。そのころの演し物として、映画やテレビドラマのパクリ、または理解するのに苦労するような荒唐無稽なもの、教科書にある会話を少しだけ変えたものなどが多かったですね。

平田オリザさんの演劇にであってから、「演劇」的フォーカスと「ドラマ」的フォーカスの両方を意識するようになったような気がします(これを書いている最中に気づきました!)。わたしも学生さんも演劇のプロではありませんし、スキットを作って、発表するのは、日本語習得促進のための学習装置と考えています。前のブログで「安全装置」という表現を使いました。次回は、ドラマ・演劇(表裏一体なので、一緒にさせてくださいね)的(敢えて曖昧に)なるものを言語教育の現場から考えていきたいと思います。

 このブログを書くという作業は、いい振り返りの方法ですねー。今まで、無意識にやっていたことを、書くという作業で自覚できるようになってきたようです。では、またお付き合いくださいね。

参考文献・ウェブサイト

河竹登志夫 「演劇の本質」小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)

演劇の定義、解説

日本でもじわじわ広がる「ドラマ教育」ってなに?――「ドラマ教育」によって伸びる子どもたちの力とは

小林由利子さんへのインタビュー